売上が伸びてきたら気になる法人化。でも、タイミングを間違えると消費税で大損することも。知っておきたい「特定期間」のしくみをわかりやすく解説します。
- 個人事業主として売上が3,000万円を超えてきた方
- 法人化のタイミングを検討中の方
- 消費税の免税をできる限り活用したい方
「売上が増えてきたし、そろそろ法人化した方がいいかな?」
そう思ったとき、まず気になるのが消費税のことではないでしょうか。法人を設立すると「2年間は消費税が免税になる」という話を聞いたことがある方も多いと思います。でも実は、この免税には「特定期間」という落とし穴があります。
まず確認|消費税の免税ってどういうこと?
消費税には「免税事業者」と「課税事業者」があります。
消費税を納めなくてよい事業者。売上に含まれる消費税分がそのまま手元に残ります。
消費税を納める義務がある事業者。「売上消費税 − 仕入消費税 = 納付額」を税務署に納めます。
売上が3,000万〜5,000万円の規模だと、消費税額は年間300万〜500万円近くになることもあります。免税を1〜2年活用できるかどうかは、手元に残るキャッシュに大きな影響を与えます。
基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下であれば免税
つまり個人事業主として2026年1月に開業した方の場合、このようになります。
(開業年)
個人事業主としては2027年末まで免税が原則です。
法人化すると2年間免税って本当?
新しく会社を設立した場合、原則として最初の2期(2年間)は消費税が免税になります。これは「設立初年度は基準期間(2年前)が存在しないから」という理由です。
ただし、この免税には条件があります。
- 資本金が1,000万円未満であること
- 特定期間の売上・給与が1,000万円以下であること(後述)
この2つ目の条件が、今回のポイントです。
「特定期間」とは何か?
特定期間= 法人設立後、最初の事業年度開始の日から 6ヶ月間
この6ヶ月間の売上、または給与支払額が1,000万円を超えると、2期目から消費税の課税事業者になってしまいます。
設立後6ヶ月の売上見込みはおよそ1,500〜2,500万円。これは特定期間の要件(1,000万円超)に引っかかる可能性が非常に高く、2期目から課税事業者になるリスクがあります。
役員報酬等の支払いを1,000万円以下に抑えることで回避できる場合もあります。顧問税理士に相談してみましょう。
免税を最大化する「1年半作戦」とは?
では、どうすれば消費税の免税を最大限に活用できるのでしょうか?
ポイントは「1期目を6ヶ月以下の短期決算にする」ことです。1期目が6ヶ月以下の場合、特定期間が存在しないため、2期目も免税のまま維持できます。
- 2026年・2027年:個人事業主として継続(2年間免税)
- 2027年10月:法人設立(1期目を10〜12月の3ヶ月に設定)
- 法人1期目:3ヶ月のみ → 特定期間が存在しない → 免税 ✓
- 法人2期目(2028年):12ヶ月 → 免税 ✓
- 法人3期目(2029年):ここから課税事業者になる
この方法を使うことで、以下のような最大4年間の免税が実現できます。
| 年度 | 事業形態 | 消費税 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 2026年 | 個人 | 免税 ✓ | 開業年(基準期間なし) |
| 2027年 | 個人 | 免税 ✓ | 基準期間(2025年)売上ゼロ |
| 法人1期目 | 法人(3ヶ月) | 免税 ✓ | 特定期間が存在しない |
| 法人2期目(2028年) | 法人 | 免税 ✓ | 1期目が短く売上基準未満 |
| 法人3期目(2029年) | 法人 | 課税になる | 2期目の売上が多額のため |
法人化を検討する前に確認したいこと
- インボイス登録の有無:未登録であれば免税戦略をフルに活用できます。
- 取引先の課税方式:取引先が簡易課税を選択している場合、インボイスの影響が少ないケースもあります。
- 法人化のコスト:均等割(年間最低7万円)など維持コストが発生します。
- 役員報酬の設計:特定期間の給与判定に備え、1,000万円以下に設計することも有効です。
- 申告の並行期間:法人設立後しばらくは個人の確定申告と法人決算が重なります。
まとめ
「法人化すれば2年間消費税が免税になる」は、正確には「条件を満たせば最大2期間免税になる」です。売上規模が大きいほど特定期間でつまずくリスクが高くなるため、法人化のタイミングは慎重に設計することが大切です。
特に売上3,000万円以上の個人事業主の方は、2027年の下半期(7〜12月)での設立を目安に、税理士と一緒にシミュレーションしながら進めることをおすすめします。