「システムを開発したけど、どう会計処理すればいい?」「売上がまだないのに減価償却が必要なの?」——ソフトウェアの会計処理は、用途によって方法が大きく異なります。基本的な考え方を整理します。

💡 こんな方におすすめの記事です
  • 自社でシステム・アプリ・ソフトウェアを開発・取得した法人・個人事業主
  • ソフトウェアの減価償却の計算方法を知りたい方
  • 開発中のソフトウェアの処理方法に迷っている方

ソフトウェアは「無形固定資産」として扱う

パソコンや機械と同じように、ソフトウェアも固定資産として計上し、減価償却を行います。ただし形のない資産(無形固定資産)であるため、償却方法や耐用年数がパソコン等とは異なります。

まず最初に判断すべきことは、そのソフトウェアが「使用を開始しているか」どうかです。

使用開始済みの場合
  • 「ソフトウェア」として計上
  • 減価償却が必要
  • 使用開始日から月割りで償却
まだ開発中の場合
  • 「ソフトウェア仮勘定」として計上
  • 完成するまで償却は不要
  • 完成・使用開始後に振替処理
⚠️ よくある間違い

開発中のソフトウェアを「ソフトウェア」として計上したまま決算を組んでしまうケースがあります。完成前は「ソフトウェア仮勘定」を使い、完成・使用開始後に「ソフトウェア」へ振り替えるのが正しい処理です。

使用目的によって、償却方法が変わる

使用を開始したソフトウェアについては、次に「自社利用か、販売目的か」を確認します。この区分によって、耐用年数や償却方法がまったく異なります。

自社利用ソフトウェア 販売目的ソフトウェア
耐用年数 5年 最長3年
償却方法 定額法 見込販売収益等に基づく方法、または均等配分
計算式 取得価額÷60ヶ月×使用月数 取得価額÷販売見込期間(月数)×使用月数
根拠資料 特になし 販売計画・事業計画等

自社利用ソフトウェアの計算例

自社の業務管理システムを500万円で取得し、2025年10月から使用開始した場合(3月決算)を例に計算します。

5,000,000円 ÷ 60ヶ月 × 6ヶ月(10月〜3月)= 500,000円
当期の減価償却費(月割り計算)

決算整理仕訳は以下の通りです。

仕訳例

借方:減価償却費 500,000円
貸方:ソフトウェア 500,000円

販売目的ソフトウェアの注意点

販売・提供を目的として開発したソフトウェアの場合、自社利用とは異なるルールが適用されます。

販売目的ソフトウェアのポイント
  • 最長3年以内に全額償却が必要(自社利用の5年より短い)
  • 販売見込期間の根拠となる事業計画・販売計画を用意しておくことが重要
  • 見込販売収益に基づく方法と均等配分を比較し、いずれか大きい方を採用
  • 売上がゼロであっても、使用開始後は償却が必要

販売目的ソフトウェアは自社利用より早く償却しなければならないため、取得価額が大きい場合は利益への影響も大きくなります。取得時から計画的に処理方針を決めておくことが重要です。

売上がゼロでも減価償却は必要か?

「まだ売上が立っていないのに減価償却が必要なの?」という疑問をよく受けます。答えは「使用開始後であれば必要」です。

減価償却は売上の有無に関わらず、資産を使用可能な状態に置いている期間中は計上する必要があります。スタートアップや創業初期の法人でも、ソフトウェアを使い始めた時点から償却を開始してください。

実務上の確認フロー

ソフトウェアの会計処理を行う際は、以下の順番で確認を進めると整理しやすいです。

1
使用を開始しているか確認
開発中であればソフトウェア仮勘定のまま。使用開始済みなら次のステップへ。使用開始日の記録を残しておく。
2
自社利用か販売目的かを確認
用途によって耐用年数・償却方法が異なる。両方の用途に使う場合は合理的な按分が必要。
3
取得価額・使用開始日を確認
取得価額には購入代金のほか、外注費・材料費なども含まれる場合がある。使用開始日が不明な場合は合理的な日付を設定する。
4
減価償却費を計算・計上
使用開始月から期末までの月数で月割り計算。決算整理仕訳として計上する。クラウド会計ソフトの固定資産台帳を活用すると自動計算できる。

よくあるご質問

自社で開発したソフトウェアも同じ処理ですか?
基本的には同じです。自社開発の場合、外注費・人件費・材料費など開発に直接かかった費用が取得価額になります。ただし研究開発費に該当する部分は資産計上できず費用処理となるため、開発費用の性格を整理しておく必要があります。
使用開始日が不明な場合はどうすればいいですか?
契約書・納品書・請求書・社内の稼働記録などをもとに合理的な日付を設定します。日付が特定できない場合は、取得した月の初日(1日)を使用開始日とするケースが多いです。いずれにしても根拠を残しておくことが重要です。
販売目的と自社利用の両方に使うソフトウェアはどう処理しますか?
利用割合等の合理的な基準で按分して、それぞれの区分で処理します。ただし按分の根拠が不明確だと税務調査時に問題になる可能性があるため、利用実態に基づいた合理的な基準を設け、その記録を残しておくことをおすすめします。
freee・マネーフォワードで減価償却の処理はできますか?
はい、どちらのソフトでも固定資産台帳にソフトウェアを登録することで、減価償却費が自動計算されます。取得日・取得価額・耐用年数を入力するだけで毎期の償却額が自動で仕訳されるため、計算ミスを防ぐことができます。
少額のソフトウェアも固定資産として計上が必要ですか?
取得価額が10万円未満であれば消耗品費として全額費用処理が可能です。10万円以上30万円未満の場合は、青色申告の中小企業者であれば少額減価償却資産の特例として全額費用処理できる場合があります(年間300万円限度)。30万円以上の場合は原則として固定資産として計上し減価償却が必要です。
※ 本記事は2026年6月時点の情報に基づいています。税法の改正等により内容が変わる場合があります。個別のご状況については必ずご相談ください。